なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

市川市動植物園のバラー正雪(まさゆき)

バラを扱ったオペラにリヒャルト・ シュトラウス作の「ばらの騎士」があります。

タイトルの「ばらの騎士」というのは、このオペラで、ウィーンの貴族が婚約の時に立てる使者で、婚約のあかしとして「銀のばらの花」を届けるという「当時の貴族間で行われていた慣習」となっていますが、実は、この台本作者のホーフマン・スタールが創作した習慣のようです。

この曲で思い出すのが、カラヤン指揮のレコードです。

カラヤンはR・シュトラウスを得意としていたようで、その中でも楽劇「ばらの騎士」は特にお気に入りの楽曲だったそうです。

カラヤンは、「ザルツブルク祝祭大劇場のこけら落とし公演」にもこの曲を選んでいますし、数多くの録音の遺産もあります。

CDの録音もフィルハーモニア管弦楽団とのスタジオ録音(1956年)とウィーン・フィルとのスタジオ録音(1982〜1984年)がありますし、DVDも1960年のザルツブルク祝祭大劇場こけら落し公演収録と1984年のザルツブルク音楽祭ライヴ収録があるようですし、ブルーレイも1960年のザルツブルク祝祭大劇場こけら落し公演版が最近出ているようです。

CDとしては、1956年の旧盤の方が永遠の歴史的名盤として極めて高い評価を受けていて、歌手陣の豪華さは圧倒的(元帥夫人のシュヴァルツコップを筆頭に、オクタヴィアン役のクリスタ・ルートヴィヒ、オックス男爵役のエーデルマン、そしてゾフィー役のシュティヒ・ランダル、ファニナル役のヴェヒター、さらには歌手役のニコライ・ゲッダなど)で、特に、有名な第3幕の「ばらの騎士の三重唱」が絶品といわれています。

ウィーン・フィルとのスタジオ録音(1982〜1984年)も発売当時、「レコード芸術」などでよく紹介され、カラヤンらしい素敵な演奏と言われていました。

現在は、CDで発売されていますがそのCDのHMVの宣伝文の解説を以下に引用します。



R.シュトラウス:『ばらの騎士』全曲
カラヤンウィーン・フィル

1982年から84年にかけておこなわれたセッション・レコーディング。このオペラを得意としたカラヤンには、最初のセッション録音のほか、ライヴ録音や映像作品が複数存在しますが、完成度の高さではなんといってもこのドイツ・グラモフォン盤が一番です。

 カラヤンお気に入りの歌手たちを集めた声楽陣営の耽美的なことや、細部に至るまで完璧に練り上げられたウィーン・フィルのまばゆいばかりのサウンドには本当にすごいものがあります。

 通常、なんとなく通過してしまうような箇所、たとえば第1幕のテノール歌手をまじえたにぎやかな場面で奏でられる室内楽的な音楽での、美しく溌剌とスタートしながらもすぐに切々と情感を高めて行く心憎いばかりの名技に接してしまうと、この曲の名盤を量産しているウィーン・フィルといえども、細部まで完璧に音楽が刻み込まれた演奏はそうそうできるものではないということを実感するほかないというのが正直なところです。

 もちろん、これにはムジークフェラインのサウンドを細部まで完璧に捉えることのできたギュンター・ヘルマンスの手腕があればこそなのでしょうが、それにしても第1幕の朝のドタバタ場面をこれほど音楽的に響かせた例はほかにありません。

 この演奏の大きな特徴のひとつが、そうした細部に宿る「美」の発見の面白さが随所にあるということと思われますが、作品本来の性格を考えると、そうしたカラヤンの手法は大正解と思われます。

 その耽美主義、完全主義の徹底ぶりは、執念すら感じさせるすごいもので、それに多額の予算を投じて応えたレコード会社の英断もあり、まさに贅をつくしたという言葉のふさわしいゴージャスな全曲録音が完成したということなのでしょう。録音芸術としてのオペラの究極の姿を示した歴史に残るアルバムです。(HMV)

【収録情報】
・R・シュトラウス:楽劇『ばらの騎士』全曲

 アンナ・トモワ=シントウ(ソプラノ:元帥夫人)
 クルト・モル(バス:オックス男爵)
 アグネス・バルツァ(メゾ・ソプラノ:オクタヴィアン)
 ゴットフリート・ホーニク(バリトン:ファーニナル)
 ジャネット・ペリー(ソプラノ:ゾフィー
 ハイツ・ツェドニク(テノール:ヴァルツァッキ)
 ヘルガ・ミュラー=モリナーリ(アルト:アンニーナ)
 ヴィルマ・リップ(ソプラノ:マリアンネ)
 ヴィルソン・コール(テノール:歌手)、ほか


   バラの騎士 (DER ROSENKAVALIER)

   作曲者:R.シュトラウス
   作曲年:1909〜1910年
   台本:ホフマン・スタール
   初演:1911年1月 ドレスデン 宮廷劇場

あらすじ

元帥夫人のマリー・テレーズは、若い愛人オクタヴィアン伯爵と情熱的な夜をすごす。
翌朝、元帥閣下の帰宅かとあわてたオクタヴィアンは、小間使いに変装する。
ところが、屋敷に来たのは夫ではなく親戚のオックス男爵だった。
男爵は、婚約者ゾフィーに銀のバラを届ける「ばらの騎士」を紹介してもらいに来たのだった。
とっさにマリー・テレーズは、自分の愛人オクタヴィアンを紹介する。
オックス男爵は、オクタヴィアンの肖像画と、目の前にいる小間使いマリアンデル(変装したオクアヴィアン)がそっくりなのを驚きながら帰っていく。

結納の日、オックス男爵は下品な振る舞いをつづけ、困ったゾフィーは、バラの騎士であオクタヴィアンに救いを求める。いつしか、二人の間に淡い恋心が芽生える。
そこへ、オックス男爵あてに、マリアンデルから誘いの手紙がくる。

オックス男爵は、ゾフィーという婚約者がある身でありながら、いそいそとマリアンデルに合いに出かける。
マリアンデルに扮したオクタヴィアンは、気まぐれな娘を装って、なかなかオックス男爵の誘いにのらない。
そうこうするうちに、ゾフィー親子がやってきて、事態の説明をもとめる。
オクタヴィアンは、元の男性の姿にもどり、オックス男爵の悪行を暴露、オックス男爵とゾフィーの婚約は破棄される。

元帥夫人マリー・テレーズは、事態を見守り「物事には終わりがあるもの」と身を引く決心をする。
オクタヴィアンとゾフィーは、晴れて結ばれる。




第3幕でのドタバタ劇は、けっこうおもしろいし、元帥夫人マリー・テレーズが、「全てが終わった!」と言って、若い愛人オクタヴィアンのゾフィーへの恋心を察(さっ)して身を引くのは「椿姫(つばきひめ)」のヴィオレッタの例(れい)のようにオペラの常套手段(じょうとうしゅだん)のような気もしますが「しんみり」する場面もあります。

「椿姫」は、「悲劇」なのですが、この「ばらの騎士」は明るくて、「ハッピーエンド」で「ドタバタ喜劇」で「愉快なオペラ」です。

オペラに登場するバラは「銀のバラ」なのですが、この上品なバラ「正雪」でもよさそうな気がします。このバラの作成者は「ミスターローズ」と言われた鈴木省三(すずきせいぞう)氏のようです。


ネットのバラ図鑑によれば、


正雪 (まさゆき)   Masayuki

系統 HT ハイブリッド・ティーローズ

作出者 鈴木省三,京成バラ園芸

作出年度
1992

作出国
日本

紹介文
アイボリーホワイト色の半剣弁の平咲きで、花の大きさが15㎝ほどの大輪種です。
花弁がとてもやわらかい為、咲き進むとふんわりした感じの優しい雰囲気のバラになります。香りは微香性。





「夕風や  
   白薔薇(しろばら)の花
           皆動く」 (正岡子規