なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

手賀沼遊歩道の葭原雀

手賀沼遊歩道脇の立木にオオヨシキリがとまってさえずっています。全方向にむかってさえずります。

「ギョギョシ、ギョギョシ、キー、キー、キー」

と大声で騒(さわ)がしく鳴いています。


「能(のう)なしの 眠たし我を 行々子」  (松尾芭蕉


(意訳)
  実業に役立たない、しがない俳諧師(はいかいし)の私を、
  オオヨシキリよ! うるさく騒いで眠れないようにしないでおくれ!


オオヨシキリは、寝ていられないほど大きな声でさえずります。


今、手賀沼遊歩道はオオヨシキリの天下です。



さて、「よしきり」は、葭切(よしきり)行々子(ぎょうぎょうし)葭雀(よしすずめ)葭原雀(よしわらすずめ)などといわれ、一般にオオヨシキリのことを言うようです。


昔からギョギョシ、ギョギョシと鳴くオオヨシキリは、よく知られていて、その鳴き声の特徴から{行々子」(ぎょうぎょうし)と言われ、葦原(よしはら)で鳴くので、その音(おん)から「葭原雀」[よしはらすずめ]などと呼ばれましたが、転じて「遊郭吉原(ゆうかくよしわら)の冷やかし客」もさして言うようになったようです。


吉原遊郭の「葭原雀」は、長唄(ながうた)や清元(きよもと)の演目としてとりあげられていますし、歌舞伎(かぶき)の「踊り」でも有名です。


例(たと)えば、今年の歌舞伎座新開場 柿葺落(こけらおとし)興行 

  九月花形歌舞伎 平成25年9月1日(日)〜25日(水)でも

吉原雀(よしわらすずめ)  
        鳥売りの男  勘九郎
        鳥売りの女  七之助
で、上演される予定です。


この踊りは、多分、長唄の「教草吉原雀」[おしえぐさよしわらすずめ]をバックに「吉原雀」の典型的な姿を踊って見せてくれるようです。 (注):教草(おしえぐさ)=お手本



この舞踊は男女の「鳥売り」が出てきて踊ります。「鳥かご」をいくつもかついだ「鳥売りの夫婦」がやってきます。この夫婦は放生会(ほうじょうえ)のための鳥を、遊郭の吉原で売るつもりなのです。


放生会」は、旧暦の8月15夜(今の9月の仲秋の名月)の前の晩に行われた仏教行事のようです。


ネット辞書の「 ウィキペディア 」によれば、放生会というのは、

「捕獲(ほかく)した魚や鳥獣を野に放し、殺生(せっしょう)を戒(いさ)める宗教儀式(しゅうきょうぎしき)である。仏教の戒律(かいりつ)である「殺生戒(せっしょうかい)」を元とし、日本では神仏習合(しんぶつしゅうごう)によって神道(しんとう)にも取り入れられた。収穫祭・感謝祭の意味も含めて春または秋に全国の寺院や、宇佐神宮大分県宇佐市)を初めとする全国の八幡宮八幡神社)で催される。特に京都府石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)や福岡県の筥崎宮(はこざきぐう)のもの(筥崎宮では「ほうじょうや」と呼ぶ)は、それぞれ三勅祭、博多三大祭として、多くの観光客を集める祭儀としても知られている」


とのことです。


この「吉原雀」では、「放生会」のために「売られている鳥を買って、それを放す」というのですが、こんな「お手軽な行為」では、あまりご利益(ごりやく)は無いような気がします・・・。


手賀沼遊歩道の「本物の吉原雀」は、浮かれていないで、自分の子孫を残すため、懸命な努力をしているようです。