なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

干拓地の水辺にいた麦わらトンボ

     


 「蜻蛉(とんぼ)うまれ 
          緑眼煌(りょくがんこう)と すぎゆけり」

                       (水原秋桜子


掲載写真のトンボは、干拓地のツバメチドリの撮影中に近くにとまったトンボを撮影したものです。

目がはっきりした緑眼なので日本のトンボの代表種「シオカラトンボ」のメスのようです。

和名のシオカラトンボは「塩辛トンボ」の意昧で、成熟したオスの腹部に生しる白粉を塩辛昆布の白い塩に見立てたネーミングだといわれています。

これに対してメスは、「シオカラ」の名前とはかなり違っているようで、やや緑がかった黄褐色の体色です。そのためメスは俗に「ムギワラ」トンボと呼ばれています。

このトンボは、日本中どこにでもいて、もっともポピュラーなトンボだそうです。

「麦わら」というと角川映画人間の証明」公開時に用いられたジョー山中の歌う主題歌と、「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね? ええ、夏、碓氷(うすい)から霧積(きりづみ)へ行くみちで 渓谷(けいこく)へ落としたあの麦藁帽(むぎわらぼうし)ですよ…」の強烈な印象を与えたCMを思い出します。

このセリフは西條八十(さいじょうやそ)の詩がオリジナルだそうです。

とても素敵な詩なので以下に掲載します。



        帽子          (西条八十

    • 母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?

ええ、夏碓井から霧積へ行くみちで、
渓谷へ落としたあの麦稈帽子ですよ。

    • 母さん、あれは好きな帽子でしたよ。

僕はあのとき、ずいぶんくやしかった。
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

    • 母さん、あのとき、向うから若い薬売が来ましたっけね。

紺の脚絆に手甲をした---。
そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。
だけどとうとう駄目だった。
なにしろ深い渓谷で、それに草が
背丈ぐらい伸びていたんてすもの。

    • 母さん、本当にあの帽子どうなったでせう?

そのとき傍に咲いていた車百合の花は、
もうとうに枯れちゃつたでせうね。そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが鳴いたかも知れませんよ。

    • 母さん、そして、きっと今頃は、--今夜あたりは、

あの渓間に、静かに雪が降りつもっているでせう。
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y・Sという頭叉字を
埋めるように、静かに、寂しく--。



この猛暑の夏もいずれ過去の思い出となっていくことでしょう!