なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

ウラナミシジミ

晩夏の畑に咲く花々に小さな蝶々がとまっています。

シジミチョウの仲間のようです。 ウラナミシジミでしょうか?

ウラナミシジミは、ヤマトシジミよりもひとまわり大型の開張2.6〜3.7cmのシジミチョウで夏の終わりによく見られるようです。

この蝶の和名は羽を閉じている時の様子がシジミ貝の内側に似ていて,さざ波模様があるので、この名が付いたようです。また、この蝶はオセアニア,東南アジア,北アフリカにかけての熱帯・亜熱帯地方に広く分布し,日本列島はその分布の北限となっているとのことです。



29歳で早逝した「ごん狐」で有名な童話作家新美南吉(にいみなんきち)のお話に「しじみ蝶」と「蛍」の心温まるお話がありますので、以下に掲載させていただきます。




          「木の祭り」  新美南吉   (出典:青空文庫


木に白い美しい花がいっぱいさきました。木は自分のすがたがこんなに美しくなったので、うれしくてたまりません。けれどだれひとり、「美しいなあ」とほめてくれるものがないのでつまらないと思いました。木はめったに人のとおらない緑の野原のまんなかにぽつんと立っていたのであります。

やわらかな風が木のすぐそばをとおって流れていきました。その風に木の花のにおいがふんわりのっていきました。においは小川をわたって麦畑をこえて、崖がけっぷちをすべりおりて流れていきました。そしてとうとうちょうちょうがたくさんいるじゃがいも畑まで、流れてきました。

「おや」とじゃがいもの葉の上にとまっていた一ぴきのちょうが鼻はなをうごかしていいました。「なんてよいにおいでしょう、ああうっとりしてしまう。」
「どこかで花がさいたのですね。」と、別べつの葉にとまっていたちょうがいいました。「きっと原っぱのまんなかのあの木に花がさいたのですよ。」

それからつぎつぎと、じゃがいも畑にいたちょうちょうは風にのってきたこころよいにおいに気がついて、「おや」「おや」といったのでありました。

ちょうちょうは花のにおいがとてもすきでしたので、こんなによいにおいがしてくるのに、それをうっちゃっておくわけにはまいりません。そこでちょうちょうたちはみんなでそうだんをして、木のところへやっていくことにきめました。そして木のためにみんなで祭まつりをしてあげようということになりました。

そこではねにもようのあるいちばん大きなちょうちょうを先にして、白いのや黄色いのや、かれた木の葉みたいなのや、小さな小さなしじみみたいなのや、いろいろなちょうちょうがにおいの流れてくる方へひらひらと飛んでいきました。崖がけっぷちをのぼって麦畑をこえて、小川をわたって飛んでいきました。

ところが中でいちばん小さかったしじみちょうははねがあまりつよくなかったので、小川のふちで休まなければなりませんでした。しじみちょうが小川のふちの水草みずくさの葉にとまってやすんでいますと、となりの葉のうらにみたことのない虫が一ぴきうつらうつらしていることに気がつきました。

「あなたはだあれ。」としじみちょうがききました。
「ほたるです。」とその虫は眼めをさまして答えました。

「原っぱのまんなかの木さんのところでお祭まつりがありますよ。あなたもいらっしゃい。」としじみちょうがさそいました。

ほたるが、
「でも、私わたしは夜の虫だから、みんなが仲間なかまにしてくれないでしょう。」といいました。
しじみちょうは、
「そんなことはありません。」といって、いろいろにすすめて、とうとうほたるをつれていきました。
 
なんて楽しいお祭まつりでしょう。ちょうちょうたちは木のまわりを大きなぼたん雪のようにとびまわって、つかれると白い花にとまり、おいしい蜜みつをお腹なかいっぱいごちそうになるのでありました。けれど光がうすくなって夕方になってしまいました。

みんなは、
「もっと遊んでいたい。だけどもうじきまっ暗くらになるから。」とためいきをつきました。

するとほたるは小川のふちへとんでいって、自分の仲間なかまをどっさりつれてきました。一つ一つのほたるが一つ一つの花の中にとまりました。まるで小さいちょうちんが木にいっぱいともされたようなぐあいでした。そこでちょうちょうたちはたいへんよろこんで夜おそくまで遊びました。