オオヒシクイのゆったりと飛ぶ姿の写真を掲載します。
昔の人は、雁の飛ぶ姿を見て何を感じていたのでしょうか?
「伊勢物語」第10段に「雁(かり)」にまつわる風流な記述があります。
「むかし、をとこ、武蔵のくにまでまどひありきけり。さて、そのくににある女をよばひけり。ちゝはこと人にあはせむといひけるを、はゝなんあてなる人に心つけたりける。ちゝはなほびとにて、はゝなんふぢはらなりける。さてなん、あてなる人にと思ひける。このむこがねによみておこせたりける。すむ所なむ、いるまのこほりみよしののさとなりける。
みよしののたのものかりもひたぶるに きみがかたにぞよるとなくなる
むこがね、返し、
わが方によるとなくなるみよしのの
たのものかりをいつかわすれん
となむ。人のくににても、猶、かゝることなんやまざりける。
意訳
昔、男が武蔵の国まで試行錯誤しながら歩き廻っていました。そこで武蔵の国にいる女を求めました。その女の父は娘を他の男と結婚させたいと言っていたのですが、母が高貴な人に執心していたのです。父は普通の家柄の人でしたが、母が藤原氏でしたので、高貴な人に婚(あ)わせたいと思っていました。
その母が、この聟(むこ)の候補者に歌を詠んで贈って来たのでした。女たちの住んでいる所は、入間郡三好野の里でした。
「三好野の田の面の雁もひたすらにあなたの方に寄ると言って鳴いているようですよその雁と同じように、あなたを信じる我が娘も、あなたのおそばにいたいと言っているようですよ。」
男の返歌
「私の方に寄ると言って鳴いているような三好野の田の面の雁をいつ忘れようか、いつまでも忘れはしませんよ。お嬢さんのことずっと忘れませんよ。」
と詠みました。他国においても、やはりこのようなことはやまなかったのです。
昔の人は、雁を見て男女の関係を考えていたのかもしれません。
雁がそれほど身近な鳥だったのでしょうね!
以下の写真はLEICA DG VARIO-ELMAR 100-400mm / F4.0-6.3 ASPH. / POWER O.I.SをOLYMPUS OM-D E-M1 のボディに装着して35ミリ換算800ミリF6.3ズームとして手持ちで撮影してみました。