なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

井戸尻湧水群の池に咲くハスの花

井戸尻湧水群の池に蓮の花が咲いていました。


ふと芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の冒頭のハスの池を思い出しました。

青空文庫より引用してみます。


「ある日の事でございます。御釈迦様おしゃかさまは極楽の蓮池はすいけのふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。池の中に咲いている蓮はすの花は、みんな玉のようにまっ白で、そのまん中にある金色きんいろの蕊ずいからは、何とも云えない好よい匂においが、絶間たえまなくあたりへ溢あふれて居ります。極楽は丁度朝なのでございましょう。

やがて御釈迦様はその池のふちに御佇おたたずみになって、水の面おもてを蔽おおっている蓮の葉の間から、ふと下の容子ようすを御覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄じごくの底に当って居りますから、水晶すいしようのような水を透き徹して、三途さんずの河や針の山の景色が、丁度覗のぞき眼鏡めがねを見るように、はっきりと見えるのでございます。
 

さて、ハスは古くから神聖な存在とされ、仏教と深い関わりを持つ植物です。

たとえば、仏像は蓮華座と呼ばれるハスの花の台座に座っていますし、ハスの花を挿した水差しを持つ仏像もあります。

香炉などの仏具もハスの花の形をしていますし、お供え物の砂糖菓子もハスの花の形をしたものがあります。

仏教にとってハスはとても大切な植物なのです。



「蓮は泥より出でて泥に染まらず」



といわれるように、池の底の汚れた泥の中から茎を伸ばし、美しい花を咲かせます。

その姿は、極楽浄土に咲くにふさわしい存在として尊ばれ、善と悪、清浄と不浄が混在する人間社会の中に、悟りの道を求める菩薩道にもたとえられました。


この池には赤い花と白い花が咲いていました。



「ひとたびも 南無阿弥陀仏といふ人の 蓮の上に のぼらぬはなし」

             空也(972年没) 拾遺和歌集




以下の写真はPanasonic コンデジ ルミックス ブラック DMC-FZ150-K (LEICA DC VARIO-ELMARIT広角25mmでF2.8、望遠側600mm相当でF5.2レンズ搭載)で手持ち撮影しました。