なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

青い柿

秋は、まだ浅いのでしょうか?
柿も青いままです。熟れていないので食べれば渋いことでしょう。
加賀の千代女の俳句に意味深長な句があります。
千代女が初夜の時に詠んだ句です。

「渋かろか知らねど柿の初ちぎり」 

昔、初夜の時
新郎が新婦に「あなたの家に柿の木はありますか」と
問います。新婦は「あります」と必ず答えます。
新郎は「採って食べてもいいですか」と聞きます。
新婦は「どうぞ」と答える

という風習があったそうです。

今は昔、今は、顔も見ないで結婚する人はいませんでしょうが・・・


閑話休題ーラザール・ベルマンの弾く「超絶技巧練習曲」ー

かって、世界的ピアニスト のギレリスは、リスト作曲の「超絶技巧練習曲(全曲盤)(1963年録音)」のLP演奏に対して、「リヒテルと私が四手でかかってもベルマンにはかなわない」と称賛したそうです。このLP演奏を聴いたアメリカの音楽マネージャーがモスクワに飛んで、アメリカ招聘が実現しました。アメリカのオハイオ州の田舎にあるマイアミ大学の講堂に、アメリカの各地から音楽評論家が集まったそうです。この実演は、大成功で大評判になり、彼の名前は、世界中に知れ渡りました。西側に突然出現したベルマンは、「チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番」を、ヘルベルト・フォン・カラヤンの 指揮で録音しただけでなく、1976年には「国際連合の日」を記念して、アンタル・ドラティ の指揮でも演奏しました。この国連の演奏は、日本でもテレビで放映されたので、私もこのテレビ放映を見ることができました。彼は、凄い大男で、熊手のような大きな手でピアノを弾いていました。話は、前後しますが、私は、ビクター発売のLPを発売と同時に買って聴いたのです。最初の出だしの前奏曲の物凄い音の迫力、今までに聴いたことのない衝撃的な音です。こんなに凄いピアニストがいるものだと驚嘆したものです。私は、その後出た同曲のCDも買って、この演奏のベストの演奏としてずっと愛聴していました。ところが、そんな時代の寵児のベルマンが、いつの間にか新譜が出なくなって、音楽業界から線香花火のように消えていきました。

彼の話題が、再び現れたのは、2005年にイタリアのフィレンツェで、74歳でお亡くなりになった報道でした。その翌年の2006年に7枚組のCD「ラザール・ベルマン・エディション」が出ました。

このCDには、リストの曲が三分の一収録されていますが、「超絶技巧」は、抜粋で若いころ(1951年ころ)の演奏です。この演奏は、63年の演奏に近い素晴らしい演奏で録音も良いのですが、抜粋なので第4曲マゼッパなどが入っていません。でも、難曲の第5曲鬼火は、63年の演奏よりも凄い演奏のように思います。ただ、しっとり聴かせる抒情的な演奏は、63年録音のほうが素晴らしいと思います。(このCDは、面白い演奏も入っていて、CD3枚目にフェインベルク編のチャイコフスキーの悲愴交響曲の第3楽章が入っています。この演奏は、ベルマンの圧倒的なテクニックが堪能できる名演奏です。CD7枚目に シューベルト:のピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960とリスト編曲の歌曲が数曲入っています。「糸を紡ぐグレートフェン」と「魔王」の演奏がベルマンらしい演奏です。)

以前、メロディアから出ていた、ベルマンの超絶技巧練習曲1959年〜61年録音のCDは、録音が悪くてとても評判が悪かったのですが、最近、20ビットデジタル処理によって少しは、聴きやすくなって再発されています。それでも、63年録音よりも録音レベルが低く、小さいスケールの演奏です。余談ですが、このCDには、リストの「ハンガリー狂詩曲第9番変ホ長調ペストの謝肉祭」が入っていて、この演奏の録音は1961年の録音で、かなり良い録音です。ベルマンらしい豪快で素晴らしい演奏です。このCDの価値は、この曲のほうにあります。

彼は、若いころから何度も「超絶技巧」を弾き続けて、63年録音のCDのように巨大なスケールの演奏に到達したのでしょう。第1曲の「前奏曲」や第4曲の「マゼッパ」などの雷鳴とどろく大スケールの演奏だけでなく、第9曲の「回想」、第11曲の「夕べの調べ」、第12曲の「雪かき」など、音がとても澄んでいて、とても綺麗な情緒的演奏も素敵です。このCDには、ベルマンのピアニズムのすべてが集約されているように感じます。これからもこの63年録音CDは、「超絶技巧練習曲」の偉大な演奏として記憶されることでしょう。

現在、残念ですが、63年録音のCDは廃番で,入手しにくくなっています。