秋の爽やかな空の下、モズの鳴き声が聞こえてきました。木のてっべんで鳴いています。辺りを見渡しながら獲物をねらっているようです。あっちをむいたりこっちを向いたりしていますが、獲物は簡単に見つからないようです。それでも長い間じっと辛抱してねらっています。あまりつきあってもいられないので、写真撮影は切り上げましたが、モズは、頑張ってねらっていました。
「御空(みそら)より発止(はっし)と鵙(もず)や菊日和 (きくびより)」 川端芽舎
閑話休題 チャイコフスキー:交響曲第6番ロ短調作品74 悲愴
悲愴(ひそう)交響曲は、日本人には、とても好まれているようで、今まで多くの指揮者のLP、CDの発売が発売されており、軽く100種類を超えることでしょう。そんなに多くの中から1枚のLP,CDをとりあげることは不可能に近いことです。それでも、私には、一枚を選ぶことができる理由(わけ)があるのです。
私とこの曲とは、忘れられない出会いがありました。今から50年以上前、私の高校1年の時に近所の医院の先生から、30cmLPをいただきました。この先生は開業したばかりで、その時は、患者がとても少なくて、暇だったからでしょうか、私の遊び相手をよくしてくれていました。この先生は、カメラやオーディオの知識を、いっぱい教えてくださいました。このLPは、私がはじめて手にした30cmLPでした。そのLPは、ターリッヒ指揮チェコ・フィルの悲愴交響曲です。私は、他のクラシックのレコードは、ドーナツ盤のLP(45回転)や、ソノシート(当時は薄いフィルム状の音が録音してある安価な円盤がありました。)は、持っていたのですが、30cmLPは、高価のため所有していませんでした。このいただいたLPを、擦り切れるほど、毎日聴きました。多感な反抗期に、このLPで、どれ程、心が癒(いや)されたかわかりません。ですから、私の頭には、この演奏が沁みこんで刷り込まれています。こんな私の宝物のようなLPだったのに、(どうしてなのか記憶がないのですが)、いつの間にか、どこかに紛れて、わからなくなってしまいました。多分、就職のために、上京した後、ずっとこちらに住んでしまったので、誰かが、整理してしまったのかもしれません。
社会人になってから、このLPを思いだして、聴きたいとの思いがつのって、買い直そうとしましたが、廃番でした。しかたなく、中古レコード店を、何度も探しましたが、見つけ出すことができませんでした。それでも、この曲には、とても愛着があるため、他の多くの指揮者の名演といわれるLP,CDは、ほとんど入手しました。それらの演奏を聴いてみるのですが、どうも、しっくりしません。
最近、ひょんなことから、日本コロンビアから出ていた「ターリッヒの芸術」のシリーズからこの演奏をみつけました。このCDもずいぶん前から廃番になっていたようですが、手に入れることができました。聴いてみると、まさしく以前に耳にした、この音です。この演奏は、他の演奏に比べて大きな安らぎを感じさせます。これは、私だけの特別な感傷だけからのものではないと思います。どの有名な演奏よりも素晴らしい演奏だと思います。
「名盤鑑賞百科 交響曲篇」吉井亜彦著 には、86種類の悲愴交響曲のLP/CDの批評が載(の)っていますが、その中に、このCDの批評が無いだけでなくて、記載さえありません。日本では、チェコ・フィルの大功労者の巨匠でも、その程度の扱いなのです。でもこの演奏は、わたしの持っているCDの中では、最高の演奏だと思っています。