なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

素敵なミコアイサ(巫女秋沙)♂の写真

浅間山をはるかに臨む小諸発電所第一調整池(通称:杉の木貯水池)のミコアイサ♂です。池の氷の上で寝ていましたが、起き上がって水上を動きはじめました。風もないので、波もなく穏やかな水の上を気持ちよさそうにゆったりと泳いでいました。

ミコアイサ(巫女秋沙)は、全長:雄44cm,雌39cm,翼開長:61〜70cmで、アイサ類では、一番小型の種です。雄は全体がほぼ白色で,背と初列風切が黒色です。目先と後頭部に黒斑があります。パンダのような顔をしているため,通称「パンダガモ」と呼ばれています。

冬鳥として全国の湖沼,大きな河川などに渡来します。アイサ類は,潜水して魚を捕らえる食性を持ったカモ科の鳥で,くちばしが細く,先は鉤形に曲がり,縁にはのこぎりの歯のようなギザギザがあり,捕らえた魚をしっかりと押さえる役目をしています。

ミコアイサは、氷上の睡眠から起きたばかりで、お腹も空いていないのか、水に潜らず、日向ぼっこ気分で、のんびりと泳いでいました。

今年は、ミコアイサを何度も撮影していますが、岸部近くでゆっくりと泳いでいる姿にはお目にかかれませんでした。白と黒とが素敵なミコアイサ♂にマジカに会えてこちらも楽しくなりました。

冬の晴れ間の佐久平、太陽の日差しも柔らかくミコアイサを照らしていました。







閑話休題千曲川旅情の歌



島崎藤村の「千曲川旅情の歌」は、流暢な調べなので、小学6年生のころからとても気に入って暗証していました。(内容はよく分からなかったのですが)今でもほとんど記憶しています。

何故、こんなにいい調べなのかと思っていたら、これには藤村の工夫(くふう)があったのです。

ローマ字にしてみるとよくわかりますが、最初のセンテンスは、母音の O(オ) が次々と続いて、韻(いん)を詠み込んでいるのです。また、次のセンテンスと次の次のセンテンスは、SI(シ) の音を重ねることで、何となく淋しい もの哀しいようなリズム感を漂わせています。

   小諸なる     古城の     ほとり
   KOMORONARU   KOJYOUNO    HOTORI

    雲白く      遊子     悲しむ
   KUMOSIROKU     YUUSI    KANASIMU

   若草も      籍くに    よしなし
  WAKAKUSAMO      SIKUNI    YOSINASI


この韻をふんでいることは、高等学校の「現代文」の教科書の「詩の鑑賞」の授業で知りました。

今でもこの詩は大好きで、佐久平に旅行すると、いつも思いだします。

いつも思い出す言葉は、「あたゝかき光はあれど 野に滿つる香(かをり)も知らず」とか「昨日またかくてありけり 今日もまたかくてありなむ」などです。






       千曲川旅情の歌      島 崎 藤 村


   一
小諸なる古城のほとり 
雲白く遊子(いうし)悲しむ
緑なす繁蔞(はこべ)は萌えず
若草も藉くによしなし
しろがねの衾(ふすま)の岡邊
日に溶けて淡雪流る

あたゝかき光はあれど
野に滿つる香(かをり)も知らず
淺くのみ春は霞みて
麥の色わづかに逭し
旅人の群はいくつか
畠中の道を急ぎぬ

暮れ行けば淺間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む

   二
昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪(あくせく)
明日をのみ思ひわづらふ

いくたびか榮枯の夢の
消え殘る谷に下りて
河波のいざよふ見れば
砂まじり水巻き歸る

嗚呼古城なにをか語り
岸の波なにをか答ふ
過(いに)し世を靜かに思へ
百年(もゝとせ)もきのふのごとし

千曲川柳霞みて
春淺く水流れたり
たゞひとり岩をめぐりて
この岸に愁(うれひ)を繋(つな)ぐ

                        
   岩波文庫「藤村詩抄」より