なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

羽ばたく江戸崎の天然記念物オオヒシクイ

10月〜11月になると、ロシアのカムチャッカ半島から霞ヶ浦に雁(がん)の仲間のヒシクイたちがやってきます。

霞ヶ浦に隣接する茨城県稲敷市の稲波干拓地(いなみかんたくち)は約230haの広々とした水田地帯で、オオヒシクイはここをえさ場としていて、2番穂やスズメノカタビラなどの食物をついばんだり、のんびりと日なたぼっこをしている姿を見ることが出来ます。

国内に飛来するヒシクイには二亜種あるそうです。亜種ヒシクイ(A.f.serrirostris)と亜種オオヒシクイ(A.f.middendorffii) です。

最初は、ヒシクイオオヒシクイは区別されていなかったそうで、ヒシクイが国の天然記念物に指定された1971年には、両亜種がまだ区別されなかったとのことです。

1980年代になって生態や分布の違いが観察され、現在、ヒシクイには2亜種あることになったようです。

亜種オオヒシクイの方が一回り大きく、そのクチバシは長く、頚(くび)も細長く、クチバシの上端の傾斜がなだらかです。ヒシクイのクチバシは短く中央部がふっくらと見えるそうです。(ヒシクイ全長78〜89cm,オオヒシクイ全長90〜100cm)。


越冬地での傾向として、日本海側には亜種オオヒシクイが、宮城県などの太平洋側では亜種ヒシクイが主としてやってきます。しかし茨城県霞ヶ浦にやって来るのはほとんどが亜種オオヒシクイとのことです。

2000年の推定で、オオヒシクイの日本への飛来数は8900羽、それに対してヒシクイの飛来数は4200羽、合計13000羽が越冬しているものと観測されています。

稲波干拓地での2014年12月12日現在の越冬数は、120羽 で、去年までの最大越冬数90羽をすでにこえているとのことです。

2014年(平成26年)11月1日から稲波干拓(いなみかんたく)は、茨城県により鳥獣特別保護区に指定されたとのことです。

江戸崎鳥獣保護区のうち江戸崎入干拓地内(稲波干拓)区域が特別保護区に指定され、これまでの狩猟が認められないほか、特別保護地区内においては、一定の開発行為が規制されることになるそうです。

以下の写真は12月14日午後3時ごろに撮影した江戸崎のオオヒシクイの写真です。

現地の人の話では、現在越冬中の120羽の中にマガンは一羽も確認されていないそうです。

このヒシクイには以下のように有名な名言があります。


   「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」(史記-陳渉世家)

(書き下し文)

   燕雀(えんじゃく)安(いずく)んぞ鴻鵠(こうこく)の志(こころざし)を知らんや


(解説)

司馬遷史記に記載されている名言です。陳勝(ちんしょう)は若い頃、日雇い農夫をしていた。仲間に対して大きなことを言って馬鹿にされたが、陳勝は「嗟呼燕雀安知鴻鵠之志哉」(ああ、燕や雀のごとき小鳥にどうして鴻(ヒシクイ)や鵠(白鳥)といった大きな鳥の志がわかろうか)と意に介さなかったということです。


ヒシクイを見ていると「小さなことにくよくよしないで生きていこう」という気分になりますよね!