なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

戸隠のミソサザイ

7月の戸隠高原の朝は早く4時ごろから明るくなります。

鳥はそれを待ちきれないのか、3時50分ころホトトギスの鳴き声が聞こえました。

朝食の時間に間があるので、早朝の探鳥にでかけました。

朝5時半ころ、戸隠神社の奥社の参道近くにある森林・湿原の木道を歩いていると、とても綺麗な金属的に鋭い複雑な鳴き声が聞こえてきました。

林は、朝靄(あさもや)に包まれていて、とても見にくいのですが、木立の中を探してみると、枝にとまって小さな小さな鳥が鳴いていました。

大きな口をいっぱいあけて、小さな体全体を震わせながら力いっぱい堂々と歌っています。

ミソサザイです。

ミソサザイは、日本最小の鳥の一つで、小さいスズメよりも、さらに小さいメジロよりも小さな鳥です。

それでもミソサザイの鳴き声は、日本3鳴鳥(にほんさんめいちょう=ウグイス・コマドリオオルリ)に匹敵するほどのすばらしい鳴き声です。


「鶯(うぐいす)に 鳴いてみせけり 鷦鷯(みそさざい)」 (森川許六


と詠(うた)われるほど上手に囀(さえず)ります。

木の枝で十分(じゅうぶん)囀っていたミソサザイは、ふいっと、飛び去っていきました。


別の場所に移動した後、帰りに同じ場所に戻ってきたら、なんと、木道脇の木の杭(くい)にとまって囀っています。

写真撮影してシャッター音が響いても、さすがに「鳥の王様」のミソサザイなので堂々としています。

ミソサザイは、外国でも日本でも「鳥の王様」なのです。

あの巨大古墳で有名な仁徳天皇(にんとくてんのう)の名前は、大鷦鷯尊(おほさざきのみこと)といい、鷦鷯(さざき)はミソサザイのことですもの。

ここのミソサザイは気分好く囀って、尾っぽをもち上げた途端、どこかに飛んでいきました。


ミソサザイは一夫多妻の鳥なので、この場所は、このオスのミソサザイのテリトリー(縄張り)で、いつも、さえずりながら巡回しているのでしょう。

里では、冬にしか見られない、ミソサザイに会えたので「朝起きは三文の得」となりました。



「山は皆 鳥のものにて みそさざい」   (松瀬青々)














喫茶去--冥王星(めいおうせい)について

2015年7月14日、9年半の歳月と約50億キロの長旅を経て、NASA無人探査機ニューホライズンズが冥王星に大接近しました。

このニュースが何故メディアで大きく取り上げられるのか疑問に思う人も多いと思います。

そこで、この冥王星探査の意義について調べてみました。

実は、冥王星はいまだによくわからない天体で、ニューホライズンズが打ち上げられた2006年、冥王星は太陽系の惑星リストから外され、新たに「準惑星」に分類されました。

そもそも冥王星は発見される前から一筋縄ではいかない天体だったようです。

海王星の外側に別の惑星が存在する可能性は、早くも1840年代には指摘されていました。

そのため、20世紀の初頭には、この未知の惑星を発見しようという競争が活発になりました。

米国ボストン生まれの大富豪パーシバル・ローウェルは、この未知の天体を「惑星X」と名づけ、私財を投じてアリゾナ州天文台を造り、1905年にそこを惑星X探索の拠点としましたが、残念ながら、1916年、惑星Xを確認することなく他界してしまいました。

ローウェルの夢見た「惑星X」は、1930年、クライド・トンボー(Clyde W. Tombaugh, 1906-1997)によって、そのローウェル天文台で発見されました。

この星は、ギリシヤ神話の「冥府の川の渡し守神」の名をとってプルートと命名されました。

それまで知られていた惑星は、アメリカ人以外の発見であり、この惑星はアメリカ人が発見者であったため、「アメリカ人の誇りの惑星」となり、当時、ディズニーはとても喜んで、アニメの新キャラクターの「犬の名前」を「プルート」と名づけたので一層アメリカ人に人気のある惑星となったのです。

かつて太陽系の惑星に分類されていた時代には、太陽からの公転軌道の順が「水金地火木土天海冥(すいきんちかもくどてんかいめい)」で表されるように、太陽系惑星の中で最も外側の軌道を公転する天体でしたが、1979年〜1999年にかけては、後二者の遠近関係が逆転し、「冥海」の順になっていました。

また、2006年に準惑星dwarf planet)に再分類されて惑星から外されたことで、アメリカでは、大騒ぎとなり、デモまでして抗議いたりしました。

したがって、今でも冥王星はアメリカでは特に人気のある星なのです。

現在、探査機「ニュー・ホライズンズ」は、飛行中(打ち上げたのは2006年1月19日で、当時冥王星はまだ「惑星」だった)で、2015年7月14日に最接近しデータが送信されてきていますが、地球からの距離があまりにも離れているために、データ送信に時間がかかり解析する時間もかかるのでこれから順次データが公開されることでしょう。

さて、冥王星探査はアメリカで騒がれているのでメディアが大きく取り上げているのでしょうか?

多分、それもあるのでしょうが、冥王星探査の意義は、実は、「準惑星降格」の原因から新たなな期待が生まれているのです。

つまり冥王星が降格された原因は、太陽系外縁天体(たいようけいがいえんてんたい)の発見があげられます。

現在、海王星より外にある天体に、冥王星のような天体がいくつも発見されており、惑星の定義の説明が必要となり、その定義によって、冥王星は、それらの多くの天体とともに準惑星となってしまったのです。

太陽系外縁天体の提唱者は、アイルランド天文学者エッジワースとアメリカの天文学者カイパーと言われています。

彼らは、太陽系の外側には惑星になりきれなかった天体が残され,その一部が彗星のもとになっていると考えました。

そのような天体が分布する、海王星の軌道の外側に円盤状に広がる領域をエッジワース・カイパーベルト(あるいは単にカイパーベルト)とよんでいます。

太陽系の惑星は、微惑星とよばれる直径10kmほどの小さな天体が衝突合体して生まれたと考えられています。

海王星の外側には、惑星になりきれなかった微惑星が今でも残っていることが、最近の理論研究からも示されています。

実在することが証明されたエッジワース・カイパーベルト天体(太陽系外縁天体)の研究は、生まれたての頃の太陽系を知るための重要な手がかりとなります。


これらのことから、冥王星への探査機のフライバイ(天体への接近通過)によるニュースは、太陽系の新しい情報の期待が出てきているため、メディアで大きく扱われているのだと思います。

今回の「冥王星探査」は、「原始地球や原始太陽」の手がかりを知ることができるのです。

また、冥王星が彗星の仲間のため、彗星の中のある有機物が生命の誕生に関係していると考えられているため、探査機のフライバイによる写真撮影のデータは、原始地球の生命の誕生の手がかりを与えてくれると期待されているのです。

今後のNASAの公表データを期待したいと思います。