なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

千鳥足で干潟を歩くメダイチドリ

干潟をメダイチドリが歩いています。

谷津干潟には、春と秋の年二回、渡りの途中の旅鳥として、メダイチドリが飛来します。

滞在期間は1ヶ月くらいです。

その間、干潟を歩き回ってゴカイなどを採食して栄養補給をしています。

当然のことですが、メダイチトリは、千鳥の仲間なので、千鳥足で動きます。

千鳥足のような不規則な値動きを、ランダム・ウォーク( random walk 酔歩=すいほ)としてとらえ、「伊藤の公式 Ito formula」をレンマ(補助定理)に用いて導かれた「ブラック・ショールズ方程式 Black-Scholes formula」のことを以前、このブログでご紹介しました。

ブラック・ショールズ方程式」は、オプション取引の値動きを千鳥足のようにバラバラに動く確率過程としてとらえ理論化に成功し、現代の金融工学(financial engineering)のデリバティブ(Derivatives= 金融派生商品)の基礎理論となりました。

実は、メダイチドリなどの歩く行動は、酔っ払いが無目的に歩く酔歩(すいほ)ではなく,「ゴカイなどの獲物のいる場所を通り過ぎた後に立ち止まり、ゴカイなどが通り過ぎたと安心したとき、急に方向転換して捕捉する」という目的を持った戦略的行動なのです。

そのため、戦略的行動に優(すぐ)れたハンターのメダイチドリが、多くの報酬が得られるわけです。

この点は、資本主義社会におけるデリバティブ取引に共通する点なのかもしれません。

でも、賢(かしこくくて貪欲(どんよく)な人だけが勝つような世の中は、あまり歓迎すべきものではなさそうです。

1998年の「ロング・ターム・キャピタル・マネジメント= LTCM」(Long Term Capital Management)の破綻(はたん)を教訓とすべきではないでしょうか?

メダイチドリのように自分が食べるぶんだけ採食する行動は、「足るを知る行為」であり、参考にすべき生き方なのかもしれません。



注1)伊藤の公式【Ito's formula,Ito calculus】

偶然性を伴う現象の解析のために,時間とともに偶然に変化するブラウン運動を考慮に入れて数学的に扱うようにした確率微分方程式.集団遺伝学や数理経済学など広い方面への応用が行われています.1942年に京都帝国大学伊藤清の導いたものであり,後のショールズ(M. Scholes)の価格決定理論(1997年のノーベル経済学賞)の基礎となったものです.



注2)ブラック・ショールズモデルは、1973年にアメリカのフィッシャー・ブラック(Fischer Black)とマイロン・ショールズ(Myron Scholes)が共同で発表し、ロバート・マートン(Robert C. Merton)によって証明されたオプション価格評価モデルです。

1995年にフィッシャー・ブラックは亡くなりましたが、1997年にマイロン・ショールズとロバート・マートンノーベル経済学賞を受賞しました。


注3)「Long Term Capital Management(ロングターム・キャピタル・マネジメント)」は、ソロモン・ブラザーズで活躍していたトレーダーのジョン・メリウェザーの発案により設立されたヘッジファンド(hedge fund)です。

1994年に運用を開始し、その取締役会の中には、FRB元副議長のデビッド・マリンズやブラック-ショールズ方程式を完成させ、共に1997年にノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズとロバート・マートンといった著名人が加わっていたことから「ドリームチームの運用」と呼ばれ、世界各国の金融機関や機関投資家、富裕層などから巨額の資金を集めました。

このドリームチームは、4年間大儲けし続けていましたが、アジア通貨危機、やロシア危機の対応に失敗し、1998年、破綻しました。