なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

小春日和に軽やかに飛ぶエナガ

尾崎喜八「美しき視野」秋の林にて(一九四七年)より

 と、突然、森のむこうの奥の方が何となくざわついて来たのに私は気がついた。それは人声でもなく、急に吹き起った風の音でもなく、経験ある耳ならば直ちにそれと理解する小烏の群の接近の音であって、フランスの鳥類研究家ジャック・ドゥラマンのいわゆる Ronde des Mésanges 「カラ類の巡邏」が、木の間に響かせる無数のすばやい翼の音や、短かい鋭い叫びだった。私は身をすくめてぴったりとクルミの根方に寄りそった。と、もう先頭のシジュウカラがつぶてのように飛び込んで来て眼の前の空開地を斜めに突切り、往手に出ていたハンノキの黒い小枝を引掴んで「ズッチョピー・ズッチョピー」と鋭い声をふりしぼった。頭を包む黒頭巾の中から黒玉のような両眼を輝かせ、黒と白と灰緑色の衣裳にきびきびと身をかためた一群の指導者、闘志に猛ける精悍な雄だった。

 私が息をころして待つ間もなく、続いて二羽、三羽、十羽という同じ仲間が、突風に吹きちぎられた木の葉のようにパラッパラッと羽音をたてて散り込んで来た。自然の中の簡潔の精神、羽毛の弾丸。性急で、敏活で、好戦的で、露ほどの感傷も持合わさないこのシジュウカラの殺到に、静寂な秋の林が一瞬のうちに異常な活気を呈して来た。彼らはいずれも耳に浸みとおるような、「チイチイチイ」や、激しく叱りつけるような「ズッチョピー・ズッチョピー・ツクツクツク」を叫びながら、頻りなしに樹から樹へ飛びうつり、強い嘴で忙しく幹を叩き、身を逆しまに針金のような小枝を渡って、寸時もじっとしていなかった。そしてこの精強な一群のあとには隊商の中の女たちとも見えるエナガの群が二十羽あまりも随って、持前の優しい性質からシジュウカラとは少し離れた樹々の間に散り、「ジュル・ジュル」という柔かな含み声や、細い糸のような「チイ・チイ」を聴かせていた。その白と葡萄いろの羽毛に包まれた細そりした小さいからだは、ややもすれば白樺の白い枝や空の光にまぎれるのだった。



11月16日は、小春日和の上天気!
手賀沼遊歩道は暖かい陽射しのもと心地よい風が吹いています。

忙(せわ)しない小鳥の鳴き声が聞こえてきました。

シジュウカラの混群30羽〜40羽です。エナガコゲラもいますが、多くはエナガで20羽くらいはいるようなので「エナガの混群」と呼ぶべきかもしれません。

まさに、尾崎喜八の文章の中の「カラ類の巡邏(じゅんら)」ですが、この混群をリードしているのは多数のエナガたちのようです。

エナガたちは、枝から枝にひらりひらりと飛び跳ねながら採食し集団を移動させていきます。

とてもすばやく動き回ります。

青空の中をエナガは軽やかに飛び跳ねています。

秋のそよ風が私の頬をかすめて通り過ぎていきました。


















シジュウカラ


エナガ