なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

ヨシにつかまって、しきりに囀るコヨシキリ

利根川土手で川面を渡る風に吹かれていると、いつも、三波春夫の「大利根無情」の歌詞の一節が頭をよぎります。

♬利根の〜 利根の川風 ヨシキリの〜
    声が冷たく 身をせめる〜♬

この歌は、天保水滸伝で語られる、かって、江戸の神田お玉ヶ池の千葉周作道場の俊英であったが破門されて労咳(ろうがい=結核)になって、やつれ果てた流浪の剣士で、笹川で客死した平手造酒(ひらてみき)を唄ったものです。

今、そんな利根川土手を歩けば多くの夏鳥のさえずりが聞こえてきます。

オオヨシキリ、コヨシキリ、オオセッカ、コジュリンや留鳥のウグイスやセッカの声も聞こえてきます。

ヨシ原で割りに甲高い澄んだ複雑な鳴き声が近くに聞こえてきました。

コヨシキリです。

コヨシキリは枯れたヨシにとまって囀っていましたが、その後、広大な利根川のヨシ原の中の一本高く目立つ見晴らしのよい枯れ葦の先端付近に飛んで、風に揺れながらも茎にしがみついて必死に頑張って囀っています。

この場所がこのコヨシキリのお気に入りの場所のようで、まるでこの場所を死守するように長時間ここに留まって囀りを繰り返しています。

明らかにこの場所はコヨシキリのソングポストなのです。

子孫繁栄のために懸命に囀るコヨシキリの姿です。


「蛙鳴き まぎれてきこゆ 小葭切(こよしきり)」    (水原秋桜子