八ヶ岳山麓の渓谷でチリチリチリと澄んだ鳴き声があちこちで聞こえます。ミソサザイの囀りです。駒鳥の声も聞こえます。同じ渓谷で、生活しているようです。
欧州では、ヨーロッパコマドリと対になって現れることも多いので、ヨーロッパコマドリがオス、ミソサザイがメスだと考えられて、コマドリが、「神の雄鳥」、ミソサザイが、「神の雌鳥」として夫婦とされていたそうです。
小さな身体なのに、口をいっぱいに開けて全身で囀ります。我を忘れて囀ります。
道元禅師の言葉を思い出します。
「仏道をならふというふは、自己をならふなり。
自己をならふといふは、自己をわするるなり。
自己をわするるといふは、万法に証せらるるなり。
万法に証せらるるといふは、
自己の身心および他己の身心をして脱落せしむるなり。」
(正法眼蔵 現成公案)
ミソサザイは、囀っている時、悟りの境地なのかもしれません。
木の枝でも岩の上でもおかまいなく、よく囀ります。静かな森がとても賑やかになります。
あたりを明るくする鳥なので、日本でも欧州でも「鳥の王様」の伝承があるのでしょうか。
ちなみに、日本書紀に記載されている仁徳天皇の名前にミソサザイの和名が使われています。大鷦鷯尊(おほさざきのみこと)・大鷦鷯天皇(おほさざきのすめらみこと)、鷦鷯(さざき)は、ミソサザイの和名です。
「鶯(うぐいす)に 啼(ない)てみせけり 鷦鷯(みそさざい)」
(森川許六)