チゴモズは珍鳥(ちんちょう)なので、松之山探鳥会で2日間あちこち探し回りました。
なかなか見つかりません。
チゴモズが、桐(きり)の花にとまっていたという情報があったようですが、この辺りには桐の花があちこちに咲いていて特定できません。
20人40の目で探しても見つからないのであきらめ始めていたら、「遠くの高い木の上にサンショウクイがいる」と言う声。
「なんだ サンショウクイか?」と、私はその声に見向きもしませんでした。
その直後「サンショウクイでない。チゴモズだ!」の声。
あわてて、その方向を見ると、遠く微かに「白いおなかの野鳥」が高い木の梢にとまっています。サンショウクイのようにも見えますがはっきりしません。
望遠レンズからファインダー越しに見ても、はっきりチゴモズとは分かりませんが、チゴモズのようです。
結果的には「チゴモズ」だったのでとてもラッキーでした。
チゴモズは、近年とても数を晴らしている野鳥で、環境省レッドリストで「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの」である絶滅危惧(ぜつめつきぐ)IA類(CR)に指定されています。
普通のモズより少し小さく全長19cmでスズメくらいの鳥のため稚児百舌(ちごもず)と言われています。頭は青灰色でクチバシか ら黒い下眼線があります。背と尾は 茶褐色をしていて「のど」から「おなか」にかけては汚白色です。
その分布は、ロシア極東沿岸部から朝鮮半島、中国北東部とのことで、日本で繁殖し東南アジアで越冬するそうです。
チゴモズは、普通のモズのような留鳥(りゅうちょう)ではなくて、夏鳥(なつどり)として4月下旬から5 月上旬に渡来し、本州中部から北部の平地から山地で繁殖するようですが、局地的で、約40年前ころから数を減らして今ではとても珍しい鳥となっているようです。
チゴモズの巣は樹上に造り、おもに雌 が抱卵し昆虫類やクモ類を捕らえて食べているとのことです。
チゴモズの姿は「モズ」に似てますが、全体に色白でとても上品な鳥で、ホトトキスと同じように夏にやってくる可愛いお客さんですね。
ところで、この松之山のチゴモズのいた周辺では、ホトトギス(時鳥)の声があちこちに聞こえました。
ホトトギスは、古来(こらい)以下に書かれているように、沓手鳥(くつてどり)と言われていてモズとは深い関係があるようです。
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「此鳥(このとり=ホトトギス)前生(ぜんしょう)に沓(くつ)を作りて売る、鵙(もず)之(これ)を買ひて、価(あたい)を払(はら)はず、故(ゆえ)に鵙(もず)は此鳥(このとり)の来る時、身(み)を潜(ひそ)めて出でずといふ」
とのことで、モズが前世(ぜんせ)で沓(くつ)を買ったのに、4月か5月ごろ返すといったのに、いまだにその借金を返していないため、ホトトギスは「払ってくれ」と催促(さいそく)して鳴くのだそうです。
モズは、捕った獲物(えもの)を枝の先に突き刺して、後で食べれるように贄(にえ)を作りますが、これは、ホトトギスへのお詫(わ)びの品で、これを「鵙(もず)の沓直(くつで)」というそうです。
チゴモズが、なかなか現れなかったのは、身を隠(かく)していたのかもしれません。
「時鳥(ほととぎす) 鳴きたつ春の山辺には
沓直(くつて)いださぬ 人や住むらん」
(新撰万葉集)
でも、「鵙(もず)の早贄(はやにえ)」は冬につくるので、チゴモズではなく普通のモズが借金したのでしょうね。