なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

平手造酒とコジュリン

昨日のブログに掲載したように笹川は、天保水滸伝(てんぽうすいこでん)の舞台(ぶたい)です。

笹川一家で死亡したのは、平手造酒(ひらてみき)ただ一人でしたが、天保15年の出入り(でいり)の際に死んだのではなく、臨終(りんじゅう)は翌日の朝で、享年(きょうねん)30あるいは30代ともいわれています。

平手造酒の墓は千葉県香取郡東庄町(とうのしょうまち)の延命寺にあるので、実在の人物のようですが、詳細は不明です。

平手造酒は、天保水滸伝では、北辰一刀流(ほくしんいっとうりゅう)千葉周作(ちばしゅうさく)道場の使い手(つかいて)となっていて、モノクロの日活映画の辰巳柳太郎 (たつみりゅうたろう)主演作品では、「地獄の剣豪(じごくのけんごう)」などとよばれています。


世界大百科事典 第2版の解説.によれば、



ひらてみき【平手造酒】 ?‐1844(弘化1)

江戸後期の博徒の用心棒。出身などはいっさい不明である。江戸の神田お玉ヶ池の千葉道場の俊英であったが破門され,田舎回りの剣術指南で歩く浪々の身となった。下総の笹川で博徒の親分繁蔵と知り合い,その客分となり,大利根河原の決闘で斬り結ぶうち全身に傷を負い,後に死んだ。この平手造酒のイメージは,講談,浪曲の《天保水滸伝》で作られたものである。実名は平田深喜という。一説によると,笹川繁蔵は平田を飯岡助五郎方のスパイと疑い,出入りの直前に刀を取りあげてしまったので,平田はやむをえず,やくざ物の脇差で戦ったが,すぐに鍔元より折れ,11ヵ所の切傷を受け落命したという。



とのことです。


平手造酒は、昭和になっても映画によく取り上げられ「座頭市(ざとういち)」にも登場します。

座頭市物語(ざとういちものがたり)は、子母澤寛(しもざわ かん)が、1948年に雑誌「小説と読物」へ連載した掌編連作(しょうへんれんさく)「ふところ手帖」の1篇「座頭市物語」が原作とのことです。

子母澤寛は、江戸時代に活躍した房総地方の侠客(きょうかく)である飯岡助五郎(いいおかのすけごろう)について取材するため千葉県佐原市へ訪れた際に、土地の古老から飯岡にまつわる話の一つとして、盲目の侠客「座頭の市」の話を聞き、盲目のヒーローをイメージしたと語っているそうです。

その座頭市(ざとういち)シリーズ第一作で、「平手造酒と座頭市の決闘」の場面が登場します。

(あらすじ)

下総(しもうさ)の飯岡助五郎親分(いいおかのすけごろうおやぶん)のところヘワラジをぬいだ座頭市勝新太郎)は、平手造酒(天知茂)という浪人と知り合います。

平手造酒は、飯岡助五郎と対立する親分笹川繁造(ささがわしげぞう)のところで世話になっている肺病やみ(はいびょうやみ)の剣客です。二人は互いに相手の腕前が相当のものであることを見ぬいて、二人の間には友情めいた気持すら生じてきます。

しかし、飯岡対笹川の争いは最終段階に突入(とつにゅう)してしまいます。笹川繁造は子分たちに座頭市を暗殺させようとしますが、逆に子分たちを斬られてしまいます。

飯岡助五郎は平手造酒が血を吐(は)いて倒れたと知って一気に笹川を打倒しょうとします。


平手造酒は、笹川が座頭市を飛道具(とびどうぐ)で殺そうとするのを制(せい)して、


「俺(おれ)が市を斬る」と言います。


気のあった座頭市へのせめてもの友情です。

飯岡対笹川の大利根の決闘の日、たがいに用心棒の筆頭として座頭市と平手造酒は斬りまくります。

そしてさいごに二人の決闘となって座頭市は勝ちますが、座頭市の心は空しく行方(ゆくえ)も知れない旅に出かけて去っていきます。

座頭市役(ざとういちやく)の勝新太郎(かつしんたろう)も良かったけれど天地茂(あまちしげる)の平手造酒も「病人の剣客」を見事に演じていました。とても記憶にのこる演技でした。



また、三波春夫(みなみはるお)の 歌謡曲大利根無情(おおとねむじょう)」では、平手造酒の心情(しんじょう)を歌っていて



♪「利根の 川風 よしきりの 声が冷たく 身をせめる 

  これが浮世か 見てはいけない 西空見れば 

  江戸へ 江戸へひと刷毛(はけ) あかね雲」♪、



と歌われています。


「見てはいけない」のは、江戸の神田お玉ヶ池(かんだおたまがいけ)の千葉道場のことなのでしょう。

平手造酒の「余命(よめい)いくばくとなく死に場所を求める」心情がよく表現されている歌詞ですね。

今では、その利根川の葭原(よしはら)でコジュリンが綺麗な声で囀っています。

よしきりは、平手造酒をせめていますがコジュリンは、彼の霊(れい)をなぐさめているのかもしれません。


コジュリンは、全長15cmでスズメより少し大きく、ホオジロの仲間の鳥なので、美しい鳴き声の鳥です。

コジュリンも局所的に分布する鳥で 環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されている希少種(きしょゆうしゅ)です。

コジュリンは、平手造酒の墓所(ぼしょ)のある千葉県香取郡東庄町(とうのしょうまち)がその代表的生息地の一つであることから、平成7年に町の鳥に制定され、平成12年(2000年)東庄町イメージキャラクターとして「コジュリンくん」が選ばれています。

有名な船橋市のユルキャラの「フナッシー」は非公認キャラクターですが、「コジュリンくん」は、公認キャラのようなのですが、世間にあまり知られていないようです。


この日は、コジュリンのさえずる声はいっぱい聞こえたのですが、撮影できなかったので、以前、同じ場所で撮影したコジュリンの写真を以下に掲載します。

最初のから4枚目までは、コジュリンのオスで、5枚目は、メスとオスで、その後の3枚の写真はメスの写真です。







            


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