5月の太陽が、森林を初夏のたたずまいに変貌(へんぼう)させて、小鳥たちが、初夏の歌を歌います。ここは、甲斐(かい)の山の中です。まわりには、まだ、わずかに残雪をみることができます。
陽だまりは、暖かですが、そよ風は少し冷たく感じます。暖かい陽につつまれて、じっとしていると、眠くなります。とてもいい季節です。眠気をこらえながら、路傍(ろぼう)に腰かけていると、チョコ、チョコと倒木の上にコマドリのオスが出てきました。
まわりをうろついて、えさ探しをしています。鳴いてくれるかと、期待しているのですが、餌探しに夢中で、囀(さえず)ってくれません。でも、木の上の舞台(ぶたい)で、可愛い仕草(しぐさ)をしてくれました。
「駒鳥(こま)の声 日をよぶ雲の 梢(こずえ)かな」
(幸田露伴)