この葦原は、中沼田の葭原よりも広いので、オオヨシキリもたくさん住み着いて競争相手も多いため、周りのオオヨシキリに負けないよう頑張って囀ります。
草野心平の詩集、「富士山」のヨシキリの作品を思い出しました。
この詩は昭和18年刊、富士山をテーマにした詩を発表し続け「題名を付けてまとめた全24編、草野心平40歳代の詩業の一つだそうです。
ヨシキリは鳴く
川面(かわづら)に春の光はまぶしく溢れ
そよ風が吹けば光たちの鬼ごっこ
葦の葉のささやき
行行子(よしきり)は鳴く
行行子の舌にも春のひかり
土提(どてい)の下のうまごやしの原に
自分の顔は両掌(りょうて)のなかに
ふりそそぐ春の光に
却って(かえって)物憂く(ものうく)眺めてゐた
少女たちはうまごやしの花を摘んでは
巧みな手さばきで花環(はなわ)をつくる
それをなはにして縄跳びをする
花環が圓を描くとそのなかに
富士がはひる
その度に富士は近づきとほくに座る
耳には行行子
頬にはひかりなかに
富士がはひる
その度に富士は近づきとほくに座る
耳には行行子
頬にはひかり
(草野心平 富士山より)