なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

薔薇 コンラッド ヘンケル

この花も秋の日に輝いています。そよ風にゆれながら咲いていました。秋も益々深まってきました。少し寒いくらいです。このバラは、ドイツの建築家 コンラッド ヘンケル Konrad Henkelの75歳の誕生日を記念して命名された1983年 ドイツ コルテス作の薔薇(ばら)です。深紅(しんく)の情熱的なバラですね。
 
「大きなる 紅ばらの花 ゆくりなく
ぱっと真紅(しんく)に ひらきけるかも」 (北原白秋


閑話休題 シューベルト歌曲集「冬の旅」全曲

寒くなってきました。こんな時、思いきって「冬の旅」を聴いてみました。

「冬の旅」作品89(D911)は、シューベルトが、1827年に作曲した24曲からなる歌曲集です。シューベルトの3大歌曲集のうちの代表的作品で、この中に、有名な「菩提樹」(ぼだいじゅ)が、含まれています。歌詞はドイツの詩人ミュラーの詩集からとられてれています。
内容は、失恋した若者が、絶望と悲しみの中で、さすらいの旅を続けていく様子が描写されていて、とても寂しく、絶望的に暗い描写の作品です。

LPでは、ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウの歌唱によるものも持っていたのですが、上手(うま)すぎるのか? 暗すぎて、聴くのが辛(つら)くなって、この曲を好きには、なりませんでした。他のバリトンや、テノールのLPも持っていたのですが、あまり聴きませんでした。

LPを全部処分したので、この曲とは、「おさらば」と思っていたのですが、CDが、残っていました。「ゲルハルト・ヒッシュ〜シューベルトの芸術」の中に「冬の旅」、「美しき水車屋の娘」、「白鳥の歌」の3大歌曲集が入っていました。この演奏は、LPではなくてSPからの復刻版の3枚組なのですが、割に、綺麗(きれい)な録音がされていて聞き苦しくはありません。この演奏は、日本での戦前での「冬の旅」の定番(ていばん)で、太平洋戦争末期に、出征(しゅっせい)する青年たちが、この世の名残(なごり)として聴いた演奏としても知られています。この曲を聴くと涙がとまらなくなるのは、そのためでしょうか?

枯れた大家のいぶし銀のヒッシュの絶唱が聴けるのですが、耐えがたい気持ちです。

そこで、現代の歌手のイアン・ボストリッジの「冬の旅」を聴いてみました。2004年のスタジオ録音なので素晴らしい録音です。ヒッシュの後で聴くと、当然ですが、その差は歴然です。それだけでなく、なんと若々しい颯爽(さっそう)とした歌唱なんでしょうか、旋律を高らかに劇的に歌います。今まで聴いていた「冬の旅」ではありません。とても元気な「冬の旅」です。こんな明るい劇的な「冬の旅」は、初めて聴きました。歌もとても上手(うま)い。それでいて、青年の苦悩(くのう)と寂(さび)しさもよく伝わってきます。やっと、安心して鑑賞できるCDに出会ったような気がしました。この曲も、時代の変遷による、リスナーの変化によって、変貌(へんぼう)しているのかも知れません。この冬は、このCDで「冬の旅」を満喫できそうです。