タンポポの名前の由来は日本語、英語ともに面白(おもしろ)いのでご紹介してみます。
英語名のダンディライオン(dandelion)はフランス語で「ライオンの歯」を意味するダン=ド=リオン(dent-de-lion)に由来しするそうで、これはギザギザした葉がライオンの牙を連想させることによるものとのことです。
一方、日本語の「タンポポ」の由来について、金田一春彦著「ことばの歳時記」に面白い説明があるので、少し長いですが、引用してみます。
「タンポポという名は、あの黄色くて丸い庶民的な花の名にピッタリだが、語源は、何だろうか。実はあの花は、その蕾(つぼみ)の形が鼓(つづみ)に似てみえるところから「つづみ草」と呼ばれ、その鼓の音を昔の人はタン、ポン、タン・ポンと聞きなしたところから子供たちがタンポポ」と呼んだのが語源である。
一世の歌の名手と仰がれた西行(さいぎょう)が津の国へ行った時に、山の奥に「鼓の滝」という美しい滝がかかっていた。ひと休みして、ふと傍(かたわら)を見ると、ひともとの花が滝のしぶきに濡(ぬ)れて咲いている。その可憐(かれん)な風情(ふぜい)をいとしんで、西行は、「津の国の鼓の滝を来て見れば、岸辺(きしべ)に咲ける タンポポの花」と詠んだ。すると、山林の間をかき分けて出てきた草刈りの少年が、それはまずいと言って、上の句を「津の国の鼓の滝を打ち見れば」と訂正したという。歌の上手(じょうず)が、一介(いっかい)の草刈りに教えられたという逸話だが、これなどは、タンポポの語源を知ってはじめておもしろみの味わえる話である。」
こんなことを考えて、そぞろ歩いてみると、タンポポに出会う楽しみが、増すような気がします。