なかなかなかね野鳥と自然の写真館

疾風怒涛の時代が過ぎ去っていきます。私たちがその中で、ふと佇む時、一時の静寂と映像が欲しくなります。微妙な四季の移ろいが、春や秋の渡りの鳥たちや、路傍の名もない草花にも感じられます。このブログは、野鳥や蝶、花や野草、四季の風景などの写真を掲載しています。

木槿の花

秋雨前線が停滞し、うっとうしい日が続いています。

家の近くの暗い茂みの上にツンと立っているピンクの花をみつけました。

昼なのに空はどんより曇っていて、その花はちょっと寂しく見えました。

ムクゲの花のようです。


若山牧水の短編「木槿(むくげ)の花」を思い出しました。


「樹木とその花  木槿の花(部分)」 (若山牧水


 むらさき色の鮮かな花といへばいかにも艷々しく派手に聞ゆるが、不思議とこの木槿の花に限つてさうでない。さうでないばかりかその反對に、見れば見るほど靜かな寂しさを宿して咲いてゐる花である。この花の咲き出す頃になると思ひ出される例の芭蕉の句の、

道ばたの木槿は馬に喰はれけり

 は如何にもよくこの花の寂しさを詠んでゐるが、なほそれでも言ひ足りないほどに今年などはこの花に對して微妙な複雜な心持を感じたのであつた。この芭蕉の句も彼が旅行の途次、富士川のあたりを過ぎつゝ馬上で吟じたものであるといふが、この花は不思議にまた我等に『旅』の思ひをそゝる。この花を見るごとに、秋を感じ、旅をおもふ。何物にともなく始終追はれ續けてゐる樣な、おちつかぬ心を持つた私にとつては殊更にもこの花がなつかしいのかも知れぬともおもふ。


長く続いた秋雨も明日は晴れる予報が出ています。