フジテレビの番宣によれば 7月からのフジテレビの「木曜劇場」は上戸彩(うえどあや)主演の『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』に決定したそうです。
女優の上戸彩は、昨年放送の大ヒットドラマ「半沢直樹」や昨年公開の映画「武士の献立」などで妻役を好演してきたので、今回、ヒロイン役を射止めたのでしょうね。
さて、北新田の路傍の草むらにヒルガオの花を観つけました。他の雑草の中に一輪だけ妖しく(あやしく)咲き誇っていました。
朝顔は、観賞用によく栽培されますが、昼顔は、雑草として扱われ、花としては、日陰者(ひかげもの)のようですね。
このテレビドラマは、1967年のフランス・イタリア合作映画「昼顔」(ルイス・ブニュエル監督カトリーヌ・ドヌーヴ主演)から、着想されたようです。
この映画でいうフランス語の ヒルガオ(Belle de jour)は、「日中の美女」の意とのことです。原作はジョゼフ・ケッセルの同名小説とのことで、第28回ヴェネツィア国際映画祭で最高賞である金獅子賞を受賞しているそうです。
ヒルガオは、地下茎でつながっていてなかなか除去できない花のようです。花言葉は、絆(きずな)だそうです。
こんな路傍(ろぼう)に咲くヒルガオも今、旬(しゅん)の花なのでしょうか?
「昼顔の 花に乾くや 通り雨」
(正岡子規)
閑話休題ー桜井の訣別(さくらいのわかれ)
時代の変化は、急激で、まさに「光陰矢の如し」です。今のご時世を反映した「夕顔」の世界と、まるで違った世界が明治〜昭和初期にはあったようです。
当時、流行った(流行らせた?)歌にはその時代の好みや精神が反映されているのかもしれません。
万物流転、諸行無常なのですね。
♪
青葉茂れる桜井の
里のわたりの夕まぐれ
木(こ)の下蔭(したかげ)に駒とめて
世の行く末をつくづくと
ーーーーーーーー ♪
最近、鳥を撮影しに森や林に行くと、青葉が茂っている光景によく出会います。
すると ♪「青葉茂れる桜井の〜 」♪の歌が頭をよぎり、昔,聞いた「建武の中興(けんむのちゅうこう)」の2話のお話を思い出します。
そのひとつは、児島 高徳(こじま たかのり)が桜の木に書いた
「天勾践(てんこうせん)を空(むな)しうすること莫(なか)れ、時に范蠡(はんれい)の無(な)きにしも非(あら)ず」
の詩を見て、後醍醐天皇(ごだいごてんのう)が、とても勇気づけられたというお話で、
もう一つのお話が、この「桜井の訣別」のお話です。
これらのお話は、お話を聞いた子供の頃は「おとぎ話」のように何気なく聴いていたのですが、後で調べてみたら、50年にわたる南北朝動乱(なんぼくちょうどうらん)の歴史を描いた軍記物語(40巻)の「太平記(たいへいき)」に書かれた名場面だったのです。
桜井の訣別は、10万の大軍を率いて九州から東上してきた足利尊氏(あしかがたかうじ)を迎え撃つ(むかえうつ)ため、楠木正成(くすのきまさしげ)は必敗を覚悟(ひっぱいをかくご)して、兵庫(今の神戸)に出陣します。
湊川(みなとがわ)の戦いを前にして、正成は、桜井の駅で、11歳の愛息・楠木 正行(くすのき まさつら)に郷里に帰るように命じます。
正成は湊川で壮烈な戦死を遂げ、正行ものちに、足利の武将・高師直(こうのもろなお)と四條畷(しじょうなわて)で戦って討ち死にしました。
楠木正成は、戦術的才能では、のちの真田昌幸・幸村父子とともに、わが国屈指(くっし)の人物と思われます。
池波正太郎の「真田太平記(さなだたいへいき)」の終盤の一場面、「大阪夏の陣前の真田幸村とその愛息とのわかれ」にも「楠木正成とその愛息」をイメージして書いたものと思われます。
楠木正成は、戦前、軍国主義に利用された反動で、戦後は軽視されるようになり、この歌もいまでは、ほとんど忘れ去られ、風前の灯(ふうぜんのともしび)のありさまのようです。
この歌は、安西愛子、森繁久彌、ダーク・ダックスなどが録音していますが・・・
この歌も軍歌や国民歌謡とともに遠い歴史の闇(やみ)に消え去る歌なのでしょうね!
どんな歌にも賞味期限(しょうみきげん)は有るのかもしれません!
蛇足ですが、この歌の作詞者 落合直文の盗作説もあったようですが、原作者の詩の仕上げをしたのが原作者を指導していた落合直文であったとのことで、盗作説は否定されているそうです。
6番にホトトギスの鳴く声が出てきます。この鳴き声は・・・!
桜井の訣別(わかれ)の歌詞を以下に掲載します。この歌は16番まであったようですが歌われているのは6番までのようです。
桜井の訣別(わかれ)
作詞:落合直文、作曲:奥山朝恭 明治32年(1899)発表
1 青葉茂れる桜井の
里のわたりの夕まぐれ
木(こ)の下蔭(したかげ)に駒とめて
世の行く末をつくづくと
忍ぶ鎧(よろい)の袖の上(え)に
散るは涙かはた露か
2 正成(まさしげ)涙を打ち払い
我子正行(まさつら)呼び寄せて
父は兵庫へ赴かん
彼方の浦にて討死せん
汝(いまし)はここまで来つれども
とくとく帰れ 故郷へ
3 父上いかにのたもうも
見捨てまつりて我一人
いかで帰らん 帰られん
この正行は年こそは
いまだ若けれ もろともに
御供(おんとも)仕(つか)えん 死出の旅
4 汝(いまし)をここより帰さんは
わが私(わたくし)の為ならず
己(おの)れ討死なさんには
世は尊氏(たかうじ)のままならん
早く生い立ち 大君(おおきみ)に
仕えまつれよ 国のため
5 この一刀(ひとふり)は往(いに)し年
君の賜いし物なるぞ
この世の別れの形見にと
汝(いまし)にこれを贈りてん
行けよ 正行故郷へ
老いたる母の待ちまさん
6 ともに見送り 見返りて
別れを惜む折からに
またも降り来る五月雨(さみだれ)の
空に聞こゆる時鳥(ほととぎす)
誰れか哀れと聞かざらん
あわれ血に泣くその声を